高速増殖炉「もんじゅ」に関する要望書
「1種類のナトリウム漏えい警報装置が鳴っても、原子炉を緊急停止しない」という原子力機構及び国の運転手順・姿勢を認めないでください。
福井県原子力安全専門委員会 各位様
2010年3月19日
http://www.jca.apc.org/mihama/monju/fukui_youbou100319.htm私達は、3月18日に開催された第59回福井県原子力安全専門委員会を傍聴し、「もんじゅ」の運転再開に改めて深い憂慮を抱き、緊急に、委員の皆さまに要望書をお送りすることにしました。
3月18日の専門委員会の場では、ナトリウム漏えい警報発報と原子炉停止の関係について委員から質問がありました。これに対して日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)からは、当日の資料No.2−2の3頁(「2次系ナトリウム漏えいにおける警報発報後の対応」)をもとに説明がなされました。その内容は、複数の種類の異なる警報装置があり、
1「2種類の警報装置が鳴った場合は『漏えいあり』と判断し、緊急停止する」、
2「1種類の警報装置が鳴った場合は、『漏えいの疑いあり』と判断し、現場で作業員が白煙等を確認した場合は停止する」とのことでした。
1995年のナトリウム漏えい火災事故の教訓を踏まえれば、警報が鳴れば原子炉を緊急停止するというのが、基本の基本ではないでしょうか。
1種類の警報装置が本当にナトリウム漏えいを伝えた場合、原子力機構のこの手順では、大事故につながり、周辺住民は生命の危険にさらされることになります。また、1種類の警報装置が鳴った場合に、作業員を現場に向かわせ白煙などを確認するというのは、作業員の生命の安全にもかかわります。2004年の美浜3号機2次系配管破断事故で5名もの死者を出した惨事が繰り返されるのではないかと強く憂慮します。
これまで「もんじゅ」の運転停止中にも「漏えい誤警報」「警報器の故障」等が頻発しました。しかし今審議されているのは、「もんじゅ」の運転中の警報発報の取り扱いについてです。上記のような運転手順で「もんじゅ」を運転再開するなど許されるものではありません。
さらに、同日の専門委員会での安全委員会事務局梶田啓悟氏は下記のように報告されました。
「ナトリウム漏えい信号によって一律に原子炉停止やナトリウムのドレンといった操作を行うことは、主要機器への熱負荷等の影響を生じることにもなるので、今後の経験を踏まえた、安全上の重要度に応じて運転手順が見直されるべきとの意見があった」
(当時の資料No.1−3「高速増殖炉もんじゅ安全性総点検に係る確認について」2月22日原子力安全委員会了承 5〜6頁)
このように、「もんじゅ」機器への影響を最優先にして、「できるだけ止めない」という姿勢は、地元の福井県民はもちろんのこと周辺住民の安全を最優先するという姿勢とはまったくかけ離れたものです。
委員からは「原子力安全・保安院や原子力安全委員会としての反省点は何か」との意見も出されましたが、これに対しては明確な回答はありませんでした。遠く離れた東京で、「もんじゅ」運転再開に期待を寄せる議論ではなく、多くの委員の皆さまも福井県で生活され、県民や周辺住民の生命の安全を第一にこれまで審議されてきたことと思います。
このような状況から、1995年の「もんじゅ」ナトリウム漏えい火災事故の教訓を踏まえ、少なくとも緊急に以下のことを強く要望します。
要望事項
「1種類のナトリウム漏えい警報装置が鳴っても、原子炉を緊急停止しない」という原子力機構及び国の運転手順・姿勢は認められないと表明してください。
2010年3月19日
《備考》
☆口に出来ぬほどの技術的愚劣、もんじゅ再開
(Blog vs. Media 時評)
http://blog.dandoweb.com/?eid=89910私のサイトも「もんじゅ」の技術的愚劣について多くを指摘してきました。「既視感ばりばり、もんじゅ低技術の恐怖」
http://dandoweb.com/backno/20080408.htmは燃えやすいナトリウム漏れを検出する電極が設計よりも13.5ミリも長く作られて、10ミリの隙間で足りずに無理矢理押し込まれていた事実を取り上げています。
第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」
http://dandoweb.com/backno/20091007.htmは内部証言をもとに、機構が一貫して自ら設計せず、パーツごとに脈絡無く下請け業者に丸投げしてきた結果、全体をつかんで目を光らせる技術者がいないと指摘しました。
そして、15年の空白があって、各パーツを発注しただけの技術者すら退職してしまいました。安全確保のために点検すると言って、実は何をしたら善いのか、現場がどのようになっていれば正解であり、安全なのか判然としない技術陣が、巨大で危険な高速増殖炉をこれから動かすのです。
例えばナトリウム漏れ検出電極の異常は誤警報続出の結果、判明したのであり、多数の施工ミスがあることは、その際の点検結果で表面化しました。自主的な安全点検で調べ得たものではないのです。どれほどのミスが隠れているのか想像を絶します。
☆平井憲夫さんのお話――原発がどんなものか知ってほしい
(5)起こるべくして起こる事故
(JANJAN編集部。2005/01/05)
http://www.news.janjan.jp/living/0501/0412292134/1.php●もんじゅの大事故
1995年12月8日に、福井県敦賀にある動燃(動力炉・核燃料開発事業団。98年10月から「核燃料サイクル開発機構」)の「もんじゅ」でナトリウム漏れの大事故が起きました。「もんじゅ」の事故はこれが初めてではなく、それまでにも何回も事故を起こしていて、私は建設中に6回も呼ばれて行きました。というのは、所長とか監督とか職人とか、元の部下だった人たちが「もんじゅ」の担当もしていたので、何か困ったことがあると私を呼ぶんですね。もう会社を辞めていましたが、原発だけは事故が起きたら取り返しがつきませんから、放っては置けないので行くんです。
ある時、電話がかかって、「配管がどうしても合わないから来てくれ」という。行って見ると、特別に作った配管も既製品の配管も、すべて図面どおり、寸法どおりになっている。でも、合わない。どうして合わないのか、いろいろ考えましたが、なかなか分からなかった。 一晩考えてようやく分かりました。「もんじゅ」は、日立、東芝、三菱、 富士電機などの寄せ集めのメーカーで造ったもので、それぞれの会社の設計基準が違っていたんですね。
図面を引くとき、私がいた日立は0・5mm切り捨て、東芝と三菱は0・5mm切上げ、富士電機は0・5mm切下げでした。たった0・5ミリですが、100か所も集まると大変な違いになる。だから、数字も線も合っているのに合わなかったんですね。これではダメだということで、みんな作り直させました。何しろ国の威信がかかっていますから、お金は掛けるんです。
どうしてそういうことになるかというと、それぞれのノウ・ハウ、企業秘密ということがあって、全体で話し合いをして、この0・5mmについて、切り上げるか切り下げるか、どちらかに統一しようというような話し合いをしていなかったんです。今回の「もんじゅ」の事故原因だった温度センサーにしても、メーカー同士での話し合いも、されていなかったんではないでしょうか。
どんなプラントの配管にも、温度計が付いていますが、私はあんなに長いのは見たことがありません。おそらく施工した時に危ないと分かっていた人がいたはずなんですね。でも、よその会社のことだからほっとけばいい、自分の会社の責任ではないと。
動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起きないほうが不思議なんで、起こって当たり前なんです。
●「事象」じゃない「事故」といえ
しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。美浜原発の大事故の時と同じように「事象があった」と言っていました。私は事故の後、直ぐに福井県議会から呼ばれて行きました。あそこには15基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。だから、私はそういう人にいつも、「事故が起きたらあなた方のせいだよ、反対していた人には責任はないよ」と言ってきました。その議員さんたちに呼ばれたのです。「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたらいいか教えてほしい」と相談を受けたんです。
それで、私はまず最初に、「これは事故なんです、事故。事象というような言葉にごまかされちゃあだめだよ」 と言いました。県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ!事故!」と議員が叫んでいたのが、テレビで写っていましたが、あれも、黙っていたら、軽い「事象」ということにされていたんです。 地元の人たちだけではなく、私たちも「事象」というような軽い言葉にごまかされちゃいけないんです。
普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。 国が、事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないんです。
(編集部注: 「平井憲夫さんのお話−−原発がどんなものか知ってほしい」は、原子力発電所建設の現場監督に長く携わった故・平井憲夫さんの話を「PKO法『雑則』を広める会」の佐藤弓子さんたちが1995年5月にまとめたものです。したがって文中の「私」とは平井憲夫さんのことです)
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