☆「原発輸出で日本の技術を上げられる」 直嶋正行経済産業相
(朝日新聞。February 27 , 2011)
http://globe.asahi.com/feature/100802/03_2.html「企業が海外へ投資をしたり輸出をしたりする際にかける貿易保険の対象範囲を広げる。原発などのインフラは、長期の資金が求められる。相手国の政策変更で事業が続けられなくなるといったリスクも、貿易保険でカバーできるようにする。長期の投資資金の出し手として、年金資金の一部を使う制度設計も検討したい」
☆国際協力銀行の分離国有化は何かオカシイ
(反戦な家づくり)
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-999.htmlさて、最近の情報で、とても違和感を感じたのは、国際協力銀行の分離独立のニュース。
(略)
国際協力銀行とは、12兆円近い資産をもった、もと政府系金融機関。
「日本企業の海外経済活動を支援するとともに国際的な金融秩序の安定に貢献しています。」という唱い文句だ。
もう少し詳しく引用すると、とり組む業務は
・日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得の促進
・日本の産業の国際競争力の維持及び向上
・地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進
・国際金融秩序の混乱への対処
資源の確保やら原発の売り込みやらの金融支援をするというのだが(略)
で、今回罠主党政権が企む国際協力銀行の分離国有化では、もうひとつ重要な変更点がある。
出資対象を開発途上国だけではなく先進国にも広げる、とか、投資金融の解禁 なんてことが並んでいる。
(略)
もちろん、原発の売り込みも問題だが、むしろ、それを言い訳にして、ジャブジャブと日本の資金をアメリカに注ぎ込むための、蛇口になる可能性が大だ。
↓
池田香代子(翻訳家)
http://twitter.com/#!/ikeda_kayoko/status/41514999964901376アメリカに東芝が原発を建設するための融資もするようです。採算性がないので、アメリカの金融機関が全部降りたから。
《関連記事》
☆米・新規原発への投資は要注意―来日中の専門家が日本政府に警告
(原子力資料情報室。2010年8月11日)
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=937http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/616.html米国のNGO「ビヨンド・ニュークリア」(Beyond Nuclear)をはじめ71団体(8/16現在72団体)は11日、菅直人内閣総理大臣、野田佳彦財務大臣、直嶋正行経済産業大臣に宛てて連名で書簡を送り、米国の新規原発プロジェクトは財政リスクが大きいので、これらのプロジェクトへの投資は控えたほうがいいと勧告した(注1)。
「ビヨンド・ニュークリア」は原発も核兵器もない世界をめざす脱原子力団体(注2)。ヘレン・カルデコット博士らが設立した。現在、同団体スタッフのケビン・キャンプスが米国の「原子力ルネサンス(復興)」の実態などについて伝えるため、日本の市民グループの招きで来日中。キャンプスは新規原発への税金投入問題や既設原発の放射能漏洩問題などに詳しい。
日本政府と原子力メーカーは中東やベトナムなどへ原発輸出を計画しているが、それに先行するものとして米国での原子力ビジネス獲得に力を入れている。同国では1970年代から新規原発の発注が途絶えている。米政府は瀕死の原子力産業を救うため、債務保証をはじめとする優遇措置を導入。米・原子力規制委員会(NRC)は現在26基の新設申請を審査中だ。いずれも第三世代と呼ばれる新しいタイプの原子炉である。
しかし 「NRCはこれまでに、どの一基も承認していない」とキャンプスは述べ、「承認が得られなければ債務保証は得られないし、そもそも着工できない」と指摘。債務保証とは、何らかの理由でコストが当初見積もりより大幅に上昇し、事業者が金融機関からの融資を返済できなくなった場合、金融機関の損失を税金で補填するというもの。「原発は遅延によるコスト上昇や最終的認可がどうなるか分からないなど不確定要素が多い。議会予算局(CBO)は債務不履行に陥る確率を50%以上と推定している」とキャンプス。
オバマ大統領は今年2月、ジョージア州ヴォーグル原発で計画されている2基の改良型加圧水型原子炉(AP1000)に、条件付きで債務保証を供与すると発表した。だがAP1000(ウエスチングハウス設計の新タイプ)は設計上の欠陥から、現在までに建設・運転認可の前提となる設計承認はおりていない。キャンプスは「設計承認がおりてもいないのに債務保証を約束するなど、新規建設をめぐってはカオス状態」と、米国の現状を語る(注3)。
米国で申請されている新規プロジェクトのほとんどに日本企業が関わっている。そのうち最も関与が大きいのがテキサス州の「サウステキサス・プロジェクト」(STP)だ(注4)。STPの3,4号機はGE-日立設計の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)が計画されている。主契約者は東芝、事業者はニュークリア・イノベーション・ノースアメリカ(NINA)。同計画には現在までに東芝と東京電力が出資参加しているが、着工前からすでにコストが上昇(注5)。日本企業が事業に参画していることから、NINAは日本の政府系金融からの支援を期待している(注6)。
「米国の新規原発プロジェクトはそのリスクの大きさから国内で資金が調達できてない。日本など海外からの融資がなければ実施は困難」とキャンプスは語る。
菅政権は「成長戦略」のひとつに原発輸出を掲げている。政府は原子力関連企業の海外進出を後押しするため、年金資金を含む公的資金を活用する方針(注7) 。キャンプスは4日、その窓口となる国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)の担当者と会見し、「米国の原発プロジェクトは途上国に比べ投資リスクが小さいと見るのは危険」と警告、「日本国民の金を投入するなら、将来性が大きく市場競争力のある自然エネルギーやエネルギー効率分野にしたほうが賢明」と結んだ。
【注】
4.関与が大きいプロジェクトとしては、他に三菱重工が参画しているテキサス州のコマンチェピーク原発などがある。
http://www.mhi.co.jp/news/story/090202.html5.NINA は08年設立の日米共同事業体。米・NRGエナジーが88%、東芝が12%を所有。STP3,4号機は当初、NINAとCPS(市が所有する電力公社)が半々で出資することになっていた。ところが設置コストは着工前から上昇、当初見積もりをすでに80億米ドルも上回り、さらにその情報が市長などに知らされていなかったとして、CPSはNINAを相手取って訴訟を起こした。最終的に今年2月、CPSは全体の約8%の出資にとどまることで決着。CPS の部分的撤退のあと、東京電力はこの5月、米政府の債務保証を条件に約9%を出資契約。東電は今後、最大約18%の出資予定。
http://www.jp.nuclearinnovation.com/about/index.html(注:PDFファイルである)
http://www.jp.nuclearinnovation.com/news/releases/0510_TEPCO_STP_Partnership.pdf6.日本政府は政府系金融が、日本企業が事業参加している海外原発プロジェクトを、先進国向けを含め支援できるよう、法制度を整備。これまで国際協力銀行(JBIC)の融資支援は途上国向けだった。先進国(当面は米国)への適用については、以下を参照。
(注:PDFファイルである)
http://www.kokai-gen.org/html/data/30/3040100001/3040100001-315.pdf原子力輸出への公的信用付与をめぐっては09年7月、日本のNGOがJBIC/NEXIに意見書を提出。
(注:PDFファイルである)
http://cnic.jp/english/topics/international/jbic.pdf7.「企業が海外へ投資をしたり輸出をしたりする際にかける貿易保険の対象範囲を広げる。原発などのインフラは、長期の資金が求められる。相手国の政策変更で事業が続けられなくなるといったリスクも、貿易保険でカバーできるようにする。長期の投資資金の出し手として、年金資金の一部を使う制度設計も検討したい」(直島直嶋正行経済産業大臣)
http://globe.asahi.com/feature/100802/03_2.html《社民党議員(当時)による質問主意書》
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/170/syuh/s170077.htm質問第七七号
日本政府によるアメリカなど先進国向け原発輸出の支援に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十年十月二十九日
近藤正道
参議院議長 江 田 五 月 殿
日本政府によるアメリカなど先進国向け原発輸出の支援に関する質問主意書
日本政府は原子力産業の国際競争力の向上を政策に掲げ、海外原子力市場の開拓・拡大と、日本企業による原発輸出を推進している。しかし原発はコストが高くつくうえ、長期投資が必要となることから資金調達が難しく、また放射能汚染や事故、核拡散など、多くの深刻なリスクを抱えているため、これまでのところ日本企業による大規模な受注はなく、また世界的に見ても原発建設は計画段階に留まっている。そこで日本政府は、政府系金融機関や貿易保険制度に日本企業の原発輸出を後押しする制度を設け、さらに市場拡大に伴う原子力事故の可能性を想定し、事故に起因する損失をカバーする国際的な賠償条約の締結も検討している。これらには国が公的信用を付与し、直接的・間接的に国民の税金が投入される。原発のように特有かつ極めて大きなリスクを伴う事業に対し、しかも途上国だけでなく核兵器国を含む先進国向け輸出に対し、こうした公的支援を適用するというのは、歴史的に重大な決定である。これを国会の審議なしに決定したり、進行させたりすることは、国民と国会をないがしろにする行為である。特に日本企業による米国への原発輸出に公的信用と公的支援を付与することに関しては、同国が先進国であり核兵器国であることからも、国民的な議論が必要である。
そこで原子力の海外輸出に対する公的信用の付与と公的支援について、以下質問する。
一 日本企業による原子力関連設備・機器、技術への輸出や投資に対し、現在までに国際協力銀行(JBIC)ないしその前身機関が先進国向けに融資した実績はあるか。ある場合、それらの内容(案件名、案件の承諾年月、案件内容、融資スキームの区分、事業実施国、借入人、承諾額、カテゴリ分類)を、すべてあげられたい。
また、日本貿易保険(NEXI)ないしその前身である経済産業省業務部門が先進国向け原子力関連事業の取引を付保した実績はあるか。ある場合、JBICと同様にその内容をすべてあげられたい。
二 本年十月一日、JBIC等政府系金融機関が統合し、政府全額出資による日本政策金融公庫が発足した。同公庫の先進国向けファイナンスに関し、株式会社日本政策金融公庫法では、輸出金融については「マッチング金融」を除き先進国向け融資を廃止し、投資金融については重要な資源の開発及び取得の場合並びに政令で定めた場合を除き原則廃止するとしている。これを受ける形で、日本政府は八月二十六日、原発事業向け「投資金融」については可能とする政令を閣議決定した。
1 現在、その対象として名前があがっているのは米国である。本年六月に発表された日米原子力共同声明では、NEXIやJBICの活用、米国エネルギー省が債務保証するプロジェクトの支援等の政策協調を進めることが明記されている。しかし電力市場が自由化されている米国では、過去三十年間にわたり新規建設の発注がなかったこと、原子力が抱えるリスクが特有かつ大きいことから、国内の金融機関からの融資が、国の債務保証制度があってもなお集まりにくく、また国民のあいだにも新規設置に補助金が投入されることに対し強い反対がある。この傾向は昨今の金融危機でさらに強まっている。日本政府は前記を閣議決定する際、既に融資対象として名前があがっていた米国における金融破たん、自然災害、戦争、テロ、送金制限などに起因する投資資金回収不能のリスクを検討したのか。
2 検討した場合、そのリスクは小さいと考えるのか、大きいと考えるのか。また、自然災害には地震も含まれるのか。
3 フランス原子力産業界も米国への輸出を狙っている。フランス企業と日本企業が輸出案件をめぐって競合している場合、フランス政府が同国企業に融資するなら、日本政府も日本企業に対し同様の融資(「マッチング金融」)を行う、との理解でよいか。
4 先進国向け融資は原則廃止されたが、原子力輸出は例外とする制度がスタートし、その最初のケースが米国向けとなると見込まれる、との理解でよいか。
三 経済産業省は本年七月、NEXIに「地球環境保険」制度を創設し、二〇〇九年一月を目途に運用を開始する、と発表した。「我が国とともに地球温暖化対策に真剣に取り組んでいく開発途上国を支援していく」とし、「その一環として、我が国の省エネ・新エネ技術の移転等により温室効果ガスの排出低減に貢献する」としている。ところが付保の対象は「開発途上国に限定せず全世界」とし、保険の適用対象として原発のプラントや機器もあげている。
1 途上国への省エネ・新エネ技術移転等により温室効果ガスの排出低減に貢献することを掲げて創設された「地球環境保険」制度が、先進国向け原子力関連設備・機器の輸出を適用対象とする理由をあげられたい。
2 産業構造審議会の貿易保険小委員会の中間取りまとめ「今後の貿易保険制度の在り方について」(二〇〇八年七月二十二日)によると、「原子力関連事業など、海外展開にあたって極めて高いリスクを有する事業の実施については、我が国においても国がリスクカバーを行うことが求められている」としている。他の国々でも同様の保険制度が原子力関連事業の海外展開に伴うリスクをカバーしているのか。その場合、具体的にそれらの国名とその保険制度をあげられたい。
3 近年、原子炉一基の価格は六十億ドルとも七十億ドルともいわれる。「地球環境保険」では、戦争や自然災害、相手国による送金規制といった契約当事者の責に帰しえない「カントリーリスク(非常危険)を一〇〇%付保するオプションを設け」るとしているが、原子力事業にもこうした保証を行うのか。
4 事由が「契約当事者の責に帰しえない」と判断するのは日本貿易保険か、経済産業省貿易保険課か、あるいはどこか。また、原子力事業を含め、一般に、そうした判断の基準はあるのか。ある場合、具体的に提示されたい。
5 従来、保険料は対象のリスクに応じて設定されていたと理解する。「地球環境保険」における保険料は、どのような設定になるのか。原発のように「極めて高いリスク」の場合、保険料も割高になる、との理解でよいか。
6 前記中間とりまとめは、原発事業を「極めて高いリスク」としている。一定の事由により契約当事者に巨額の損失が生じ、「地球環境保険」ではカバーしきれない場合、再保険や国(すなわち国民の税金)からの借入金でカバーすることになる、との理解でよいのか。
7 京都議定書のもとで「クリーン開発メカニズム」(CDM)に原子力が対象として組み入れられた場合、CDMを利用した途上国への原子力輸出も貿易保険の対象となるのか。
四 経済産業省によると、「今後、国内での原子力発電所建設の低迷が見込まれる中で、世界最大の開かれた原子力市場である米国で新規建設が進めば、我が国の原子力産業にとって有望な市場となりうる」としている。原子力産業は核兵器国と日本、ドイツ、カナダなどの工業国の原子力産業が中心であり、その衰退により企業の統合・合併が進んでいる。日本をはじめ大規模な原子力産業を抱える国々では、国内における建設が頭打ちとなっている。トルコでは同国初の原発設置をめぐる入札に一社しか応募せず、建設計画が棚上げになった。フランスのアレヴァ(AREVA)グループがフィンランドに建設中のオルキルオト原発三号機は、当初計画より二年半以上もの遅れが生じ、建設コストは五〇パーセントも膨れ上がっている。近年、「原子力ルネサンス」といわれているが、このように依然としてかけ声のままであり、計画は順調に進んでいるわけではない。
1 国が公的信用を付与してまで海外の原子力市場を開拓・拡大する必要があると判断した理由を具体的にあげられたい。
2 その理由のひとつとして地球温暖化対策があると聞いている。危険な気候変動を回避するには二〇一五年頃までに、実際に温室効果ガスの排出を削減へと向かわせるような実効力のある措置と技術の導入が求められている。原発の設置には、その計画から建設、送電までに時間がかかる。原発一基が新規建設され、送電が開始されるまでに、たとえば米国では何年、タイやベトナムのような途上国においては何年かかると日本政府は見込んでいるのか、数字を示されたい。
3 現在、世界では約四百三十基の原発が稼動中である。この六月に国際エネルギー機関(IEA)が策定したエネルギーシナリオによると、たとえ二〇五〇年までに毎年三十二ギガワット(百万キロワット級原発三十二基、あるいは毎月二・六基)を建設し、原発基数を倍加させたとしても、それによって見込まれるエネルギー部門の二酸化炭素排出削減効果は六パーセントという。原発は原子炉だけでなく、核燃料工場や放射性廃棄物管理・処分施設、そして場合によっては送電線も建設しなければならず、さらに事故や核拡散、核テロといったリスクへの措置など、そのコストは測りしれない。原子力事業ではなく、自然エネルギーやエネルギー効率などのエネルギー技術を輸出するほうが、コスト面においても安全面においても、また二酸化炭素の削減においても、はるかに合理的で効果的と考えるが、いかがか。
五 原子力設備・機器、技術を海外に輸出するにあたっては、3S(核不拡散/保証措置、原子力安全、核セキュリティ)を担保しなければならない。外務省によると、これらを担保するにあたっては、明文化されたクライテリアのようなものはなく、今後も設けないだろう、とのことである。
1 その国のエネルギー政策は主権国が判断し決定することであるが、日本の企業が原子力関連の設備・機器、技術を輸出するにあたっては、日本政府による輸出許可が必要となり、これは日本政府が判断し決定することである。相手国の主権の尊重は当然としても、輸出国が条件をつけられないとはなりえない。外務省によると、こうした条件をつけるのは外交上、差し障りがあるとのことであったが、明文化されたクライテリアのようなものがなければ、国によって対応を変えることもありえ、公平とはいえないと考えるが、いかがか。
2 相手国に原子力設備・機器、技術等を輸出するにあたっては、原子力の平和利用に関する二国間協定が締結されていることが大前提である、との理解でよいか。
3 二国間協定が締結されていない日露間で、実質的にウラン濃縮等の取引が行われている。この実例からも、原子力輸出にあたって3Sを担保するためのクライテリアが明文化されていないと、ビジネスが先行する危険があると考えるが、いかがか。
4 核兵器国へ原子力設備・機器、技術等、とくに機微技術を輸出するにあたっては、当該輸出技術に対する国際原子力機関(IAEA)による全面的な査察を条件とすべきであり、二国間協定にその条項が盛り込まれるべきだと考えるが、どうか。また、たとえば米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准していない。相手国が核兵器国・非核兵器国にかかわらず、二国間協定に加えCTBT、核拡散防止条約(NPT)、IAEA追加議定書など、核拡散を防ぐ上で最低限必要と考えられる条約を締結していることを輸出許可の条件とし、それを明文化することが必須と考えるが、いかがか。
六 文部科学省の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会の議事録と、同会で配布された資料によると、米国が本年五月に「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)を批准したこと、発効要件の締約国が五カ国であることなどから、日本にも締結するよう求め、同省も原子力損害の賠償に関する国際条約のなかではCSCが現実的としている。CSCは巨大な天災地変は免責するが、国際間での核物質等の輸送における事故を含む、原子力事故による損失をカバーするとしている。
1 CSCなど、新たに締結が検討されている国際的な原子力損害賠償に関する条約に資金を拠出する、あるいは分担するのは、国と電気事業者か。現在、検討されている拠出者・分担者をすべてあげられたい。
2 保険制度と損害賠償制度の契約当事者は、自然災害等によって生じた損失は日本貿易保険で、原子力事故によって生じた損害に対する賠償は、締結が検討されている国際的な原子力損害賠償に関する条約によってカバーされる、との理解でよいか。
3 こうした国際的な原子力損害賠償に関する条約の締結が検討されているのは、原子力を新規導入したり拡大したりすることに伴い事故リスクが高くなることから被害者保護が重要になってくるため、そして事故リスクが想定されるがゆえに、こうした条約を締結することで「プラント輸出を行う電機メーカー、燃料等の国際輸送を行う電気事業者等にとっては、複数国における賠償を求める裁判の提起が回避されること、国際的な事業者間で賠償責任を負う範囲が明確化されること、といった事業遂行上の法的なリスク」(前記の配布資料より)を抑えられるようにするため、との理解でよいか。
4 前述をまとめると、資金調達が難しい国への原子力輸出に対する融資、投資回収リスクに対する貿易保険、そして原子力事故に対する損害賠償制度は、どれも原発事業とその輸出がいかにリスクが大きいかを端的に示すものである。日本政府が民間事業者による原子力輸出を、これらの制度を導入するなどして後押しするのは、リスクが大きくとも、海外輸出をしなければ国内原子力産業がその技術とビジネスを維持できないため、との理解でよいか。
七 JBIC/NEXIが実施する公的融資・貿易保険の付保に係る審査では、支援対象プロジェクトによる環境への影響が大きいと考えられる場合、現地踏査や関係者ヒアリングを踏まえ、住民協議や情報公開の状況も含めた総合的な確認を行っており、確認結果はJBIC/NEXIのホームページ上で公開されている。一方、原子力関連プロジェクトの安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等に関しては、JBIC/NEXIは審査対象に含めておらず、JBIC/NEXIの依頼を受け経済産業省が確認することとなっている。
1 原子力関連プロジェクトについて、当該プロジェクトの安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等に関する文書が作成される場合、環境アセスメント報告書とは別に作成されると理解しているが、その理解でよいか。
2 プロジェクトの安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等については、現地の市民の立場からすれば非常に重大な事項である。しかしながら、現在、JBIC/NEXIは、プロジェクト実施主体に対して公開を要求または義務付けていない。これらの情報について、日本が支援する原子力関連プロジェクトの場合には、実施国における公開が非常に重要であるため、これらの情報公開を義務付けるべきであると考えるがいかがか。これが困難な場合は、その理由も示されたい。
3 原子力関連プロジェクトの安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理に関して、JBIC/NEXIの依頼に基づく経済産業省による確認結果の文書は、JBIC/NEXIに属するという理解でよいか。
4 3の理解が正しければ、JBIC/NEXIが当該文書を現在公開していない理由を示されたい。
5 原子力関連プロジェクトの輸出への支援については、原子力プロジェクトが抱える固有の問題を鑑みれば、慎重に審査すべきであり、また、その審査結果についても、日本国民への説明責任を果たすべく公開されるべきと考えるが、いかがか。具体的には、経済産業省からJBIC/NEXIに宛てた審査依頼の回答と共に、「原子力発電関連資機材等の輸出に係る安全確認に関する調査票」が公開されるべきであると考える。公開が難しい場合には、その理由も示されたい。
6 経済産業省が、JBIC/NEXIの依頼を受け確認作業をする際の、安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等に関する文書については、経済産業省が直接借入人より受け取った文書であると理解している。JBIC/NEXIが借入人より受け取っている他の環境社会配慮文書は公開しているにもかかわらず、確認を依頼しているJBIC/NEXIあるいは経済産業省が当該文書を公開していない理由を示されたい。
7 現在、JBIC/NEXIは、案件審査を行う際、環境社会影響が大きいプロジェクトについては現地実査を実施し、また、現地における住民協議や情報公開の状況については確認を行っている。しかしながら、原子力関連プロジェクトの安全性確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理について経済産業省が審査する場合には、机上での確認に留まっていると理解している。経済産業省がこれらを審査する場合にも、JBIC/NEXIが審査するのと同様に現地実査を行い、またこれらに関する住民協議や情報公開の確認も実施すべきであると考えるがいかがか。実施すべきでないとする場合には、その理由と共に、回答されたい。
右質問する。
↓
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/170/touh/t170077.htm答弁書
答弁書第七七号
内閣参質一七〇第七七号
平成二十年十一月十一日
内閣総理大臣 麻 生 太 郎
参議院議長 江 田 五 月 殿
参議院議員近藤正道君提出日本政府によるアメリカなど先進国向け原発輸出の支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員近藤正道君提出日本政府によるアメリカなど先進国向け原発輸出の支援に関する質問に対する答弁書
一について
株式会社日本政策金融公庫国際協力銀行(以下「JBIC」という。)及びその前身機関において、先進国向けの原子力関連の融資を行った実績はないものと承知している。
また、独立行政法人日本貿易保険(以下「NEXI」という。)及びその前身機関である通商産業省貿易局において、先進国向けの原子力関連の保険引受を行った実績はあるものと承知しているが、その詳細については、これを公にすることにより契約相手方の正当な利益等を害するおそれがあるとともに、これを明らかにするための調査に膨大な作業を要することから、お示しすることは困難である。
二の1及び2について
御指摘の株式会社日本政策金融公庫法施行令の一部を改正する政令(平成二十年政令第二百七十一号)において、株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)別表第三第三号に掲げる業務(以下「貸付等」という。)のうち先進国における業務の特例として原子力発電に関する事業を規定するに当たっては、一般に先進国は、安全規制を適切に行える体制等を整備し、安全確保等のために整備されている国際約束等を受け入れ、遵守していること等を考慮し、こうした市場において、高い技術水準を有する我が国の原子力産業の展開を図ることが、その国際競争力の維持又は向上に資すると判断した。
また、今後、個々の案件を審査する際には、御指摘の地震を含む自然災害等により投資資金回収が不能となるリスクも含め、案件に応じて様々な角度からリスクが評価されることになる。
二の3について
お尋ねの「マッチング金融」の必要性については、具体的な案件を十分に検討した上で個別に判断されることになる。
二の4について
これまでのところ、JBICによる先進国における原子力発電に関する事業への貸付等の実績はなく、現時点においても案件が具体的に検討されている状況にはないものと承知している。
三の1について
御指摘の「地球環境保険」については、平成二十一年一月を目途に、NEXIにおいて運用を開始する予定であるが、同保険は、地球温暖化対策の観点から温室効果ガスの排出低減に資する設備、機器等の輸出等を支援するためのものであることから、先進国向けの原子力発電関連の設備、機器の輸出についても対象とする予定である。
三の2について
お尋ねの他の国々における貿易保険制度の状況について、詳細は承知していないが、例えばフランスの貿易保険機関による支援の実績があるものと承知している。
三の3について
「地球環境保険」の付保対象となる案件であれば、いわゆるカントリーリスクについて百パーセント付保することを可能とすることとしている。
三の4について
例えば、輸出者が貨物を輸出することができなくなったことにより受ける損失をてん補する場合には、貿易保険法(昭和二十五年法律第六十七号)第二十七条第二項第一号から第六号までに掲げる事由に該当するかどうかについて、NEXIが個別具体の事例に即して判断することになる。
三の5について
貿易保険の保険料は、仕向国の信用力、保険期間、付保率等に基づき算出されるものであり、原子力発電関連の設備、機器等に係る案件についても同様である。
三の6について
御指摘の「「地球環境保険」ではカバーしきれない場合」がいかなる場合を指すか必ずしも明らかではないが、あらかじめ締結した契約における保険金額を超えて、NEXIが被保険者に対し保険金を支払うことはない。
三の7について
原子力がクリーン開発メカニズムの対象となるかどうかにかかわらず、一般に、原子力発電関連の設備、機器の輸出は貿易保険の付保対象となる。
四の1について
世界のエネルギー需給の安定、地球温暖化の防止及び我が国原子力産業の国際競争力の維持又は向上の観点から、海外の原子力市場が健全に発展するとともに、我が国原子力産業の国際展開が適切に進むことが重要であると考えているからである。
四の2について
原子力発電所の建設計画の策定から送電開始までの期間については、各国の政策や建設案件の状況等によるため、お尋ねにお答えすることは困難である。
四の3について
世界のエネルギー需給の安定、地球温暖化の防止及び経済成長を同時達成するためには、原子力発電のみならず、新エネルギーや省エネルギーを含め、あらゆる技術を利用していくことが重要である。このため、我が国としては、新エネルギーや省エネルギーなどの技術の輸出についても積極的に取り組んでいる。
五の1について
政府としては、御指摘の「3S」が重要であると認識し、原子力政策大綱(平成十七年十月十一日原子力委員会決定)等においてもその旨を明記している。これを確保するために必要な細目については、現在、国際的にも様々な場で議論がなされているところであり、我が国としては、このような議論も踏まえた上で、原子力資機材の調達等に関する協力の実施の是非につき総合的に判断することとしている。
五の2について
我が国から原子炉等の原子力資機材等を輸出するには、他の主要な原子力先進国と同様、我が国と輸出先国との間で原子力の平和的利用に関する二国間協定の締結が必要であると考えている。
五の3について
御指摘の日露の事業者間で行われている濃縮ウランの取引は、専ら我が国事業者による濃縮ウランの購入に係るものであり、我が国からの原子力資機材等の輸出を伴うものではないと承知している。
五の4について
お尋ねの核兵器国への原子力資機材等の輸出については、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)上の核兵器国が国際原子力機関(以下「IAEA」という。)の保障措置を受諾する義務を負っていないことを踏まえ、保障措置が適用されない場合であっても我が国から移転された原子力資機材等の平和目的使用の遵守が適切に確保されるための措置を、我が国と当該核兵器国との間の国際約束において規定している。
また、原子炉等の原子力資機材の調達等に関する協力の実施に当たっては、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティの確保が不可欠との観点から、当該協力を行う相手国に対してIAEA追加議定書等の関係条約の締結を求めることとしている。
六の1から4までについて
御指摘の原子力損害の補完的補償に関する条約を含め、一般に、原子力損害賠償に関する国際条約は、原子力損害を被った被害者に対する賠償を保障するとともに、原子力の平和的利用の発展に資する等の観点から、締結が検討されているものと承知している。我が国としては、これらの条約を締結するかどうかは今後の検討課題であると考えており、現時点でこれらの条約についてのお尋ねにお答えすることは困難である。
なお、お尋ねの「保険制度と損害賠償制度の契約当事者」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、貿易保険は、自然災害等当事者の責めに帰することができない事由により輸出代金を回収できなくなった輸出者等が受けた損失をてん補するものであり、また、原子力損害賠償に関する国際条約は、一般に、原子力損害に対する原子力事業者の賠償責任に関する制度等を規定するものであると承知している。
いずれにせよ、政府としては、世界のエネルギー需給の安定、地球温暖化の防止及び我が国原子力産業の国際競争力の維持又は向上の観点から、海外の原子力市場が健全に発展するとともに、我が国原子力産業の国際展開が適切に進むことが重要であると考えている。
七の1について
原子力資機材の輸出に公的信用を付与する場合における安全確認(安全確保等に関する配慮の確認をいう。以下同じ。)については、JBIC又はNEXIからの依頼により経済産業省が行っている。安全確認の結果は、JBICが作成する環境チェックレポート又はNEXIが作成する環境レビュー結果には含まれていないものと承知している。
七の2について
JBICにおいては、プロジェクト実施主体により、プロジェクトの安全確保、事故時の対応、放射性廃棄物の管理等の情報が適切に住民に対して公開されていない場合には、貸付等を行うことのないよう、今後指針を作成することとしている。また、NEXIにおいては、保険種ごとの制約を踏まえつつ、輸出者等を通じてプロジェクト実施主体に対して情報公開を促すなど、可能な範囲で対応することとしている。なお、JBIC及びNEXIは、原子力発電に関する公的信用の付与に際しては、短期貿易保険における少額案件を除き、経済産業省において安全確認が行われることをその条件の一つとしている。
七の3及び4について
原子力資機材の輸出に公的信用を付与する場合における安全確認の結果に関する文書は、経済産業省からJBIC又はNEXIに対して発出した文書であるが、当該文書の公開については、JBIC又はNEXIにおいて、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)にのっとり、開示されるものと承知している。
七の5について
お尋ねの調査票は、JBIC又はNEXIが公的信用を付与するに当たり、その依頼に基づいて経済産業省が行う安全確認において用いられる情報の一部であるので、経済産業省においては公表していない。他方、同調査票が安全確認の結果とともにJBIC又はNEXIに対して提供された場合には、JBIC又はNEXIに対して提供された同調査票の公開については、JBIC又はNEXIにおいて、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律にのっとり、開示されるものと承知している。
七の6について
原子力資機材の製造者等から経済産業省に提供された情報は、JBIC又はNEXIが公的信用を付与するに当たり、その依頼に基づいて経済産業省が行う安全確認において用いられる情報の一部であるので、経済産業省においては公表していない。また、当該情報をJBIC又はNEXIが保有する場合は、JBIC又はNEXIにおいて、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律にのっとり、開示されるものと承知している。
七の7について
原子力の安全に関する条約(平成八年条約第十一号)にも示されているとおり、原子力発電所の安全確保は当該発電所が立地する国の責任である。原子力資機材の輸出に公的信用を付与する場合における安全確認は、こうした前提の下で、JBIC又はNEXIからの依頼に基づき経済産業省が行っているものであり、御指摘の現地調査等は必要ないと考えている。
《おまけ》
☆国際協力銀行の米国原発融資検討中止を求める要請書を提出/原子力資料情報室CNIC
(薔薇、または陽だまりの猫)
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/39f484630953d8fcbdb2c75272d9800c米国の原子力資料情報サービス(NIRS)は2月24日、菅総理大臣および経済産業大臣、財務大臣、国家戦略担当内閣府特命担当大臣宛に下記の要請書を送付しました。
日本の国際協力銀行(JBIC)が米・テキサス州で計画されているサウステキサス原発プロジェクト(STP)への融資検討を中止するよう求めるこの要請書には米国、日本、世界各国から170以上の団体が賛同しています。
(略)
団体用の要請書の日本語訳
内閣総理大臣 菅 直人 殿
私たちは貴方に国際協力銀行(JBIC)が米・テキサス州で計画されているサウステキサス原発プロジェクト(以下、STP)に融資するのを制していただきたく、筆をとっています。
このような融資は、きわめて大きな財政的・社会的リスクをJBICと日本の人々に負わせることになるでしょう。
米国で計画中のどの原発も不況はもとより、建設費見積もりの上昇、電力需要の鈍化、安価な天然ガスや安全でクリーンな再生可能エネルギー源との価格競争といった厳しい経済環境にさらされています。なかでもテキサス州は電力市場の規制緩和による価格競争が進み、卸売電力価格は国内有数の低さです。
そのテキサス州で高コストの新規原発プロジェクトに融資するのは、とりわけリスクを伴います。
STP2基のコストは2006年には56億米ドルと見積もられていましたが、今は180億米ドルに跳ね上がっています。
サンアントニオ市(訳注:STPの共同事業者)が所有する公共電力事業者・CPSエネルギー社は、STPの共同事業者であるNRGエネルギー社(米国の債務保証の申請者)を先のコスト見積もりは詐欺・不正行為・共謀にあたるとして、320億米ドルの賠償を求める訴訟を起こし、同社の外部パートナーとの取引を指摘しました。最終的にサンアントニオ市は昨年、STPのコスト高騰を理由に出資額を85%減らしました。NRGは現在、STPの電力を購入してくれる他の公共電力事業者を、固定価格やその他のインセンティブを約束することで、懸命に確保しようとしていますが、このような措置はプロジェクトの経済的実行可能性をさらに危うくするでしょう。
テキサス州に新規に設置された原発が供給する電力は、市場価格よりはるかに高くなるでしょう。同州の主要な送配電(グリッド)事業者・ERCOT(Electric
Reliability Council of
Texas)の独立した評価によると、STPにかかるコストはそれが電力市場から得られる収益を33%から52%も上回るとしています。
テキサス州は風力や天然ガスが豊富です。こうした低コストの代替エネルギーが今後も同州の需要を満たすでしょう。
テキサス州は米国最大の風力発電市場で、1万メガワット以上を供給しています。天然ガス賦存量は100年分とされており、低価格のエネルギーを長期にわたって保証しています。
ERCOTの分析(2010年)では、テキサス州で太陽光発電のキロワット当たりの資本コストは既に原発を下回り、いかなる想定においてもコスト優位はさらに高まると見込まれています。
現在、テキサス州の平均的な電力卸売価格はキロワット時あたり3.7セントです。STPの資本コストからすると、新規原発の価格はキロワット時あたり12セントから20セントとなるでしょう。
電力需要の大幅な伸びが予測されたのは2-3年前のことで、それが新規発電計画のベースになっていましたが、今後10年ないしそれ以上の間、そうした需要が生じることは、ほぼありえません。これは米国経済の低迷はもちろん、エネルギー効率が全般的に向上していることによるものです。
STPには日本企業が参加しているので、良好な融資先のように見受けられるかもしれません。しかし現実には他の原発プロジェクト計画と同様、STPとそれに関わっている日本企業は、遅延、設計問題、財務上の困難、そして市民のゆるぎない反対に悩まされることになるでしょう。さらに米国の原発建設の歴史を見ると、楽観する余地はありません。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の調査(1986年)によると、初期の原発75基は当初見積もりを207%、つまりは3倍以上も超過しています。その後の50基の超過はさらに大きく、最大800%にも達します。この並外れた超過が引き起こした債務不履行は何十億ドルにものぼり、少なからぬ電力事業者が深刻な赤字を抱え、破産へと追い込まれました。米国の経験は、新規原発プロジェクトが過去のプロジェクトよりコストを抑えられると示唆するものは、皆無です。
私たちはこの深刻な財務リスクについて米国の納税者や選良に警告してきました。それと同様に私たちは貴方に対し、米国の新規原発への融資を決定する前に、これらのリスクを注意深く斟酌することを強く勧めます。日本の納税者は米国の原発プロジェクトのために金を失いたくないでしょう。
米国の納税者もまた、予測しうる損失が生じたとき、JBICを救済しようとはしないでしょう。こうした結末を迎えるのは、太平洋のどちらの側にとっても、好ましくないのは明らかです。
敬具
cc:
経済産業大臣 海江田 万里 殿
財務大臣 野田 佳彦 殿
国家戦略担当内閣府特命担当大臣 玄葉 光一郎 殿