2008年10月01日

国連事務総長報告「劣化ウラン兵器使用の影響に関する見解」

[転送・転載歓迎]


国連事務総長報告:「劣化ウラン兵器使用の影響に関する見解のまとめ」

2008年9月29日

 昨年12月に国連総会において採択された「劣化ウラン決議」を受けて、日本を含む15カ国と、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機構(WHO)から「劣化ウラン兵器使用の影響に関する見解」が国連事務
総長宛てに提出され、それらをまとめた「報告書」が、7月24日付けで、事務総長名において出されました。

[その後、提出された「見解」については、この報告書の補遺として発行されるとのこと。][この報告書発行の時点では、米国、英国など使用国からの報告はなされていませんし、UNEP(国連環境計画)からの報告も含まれていません。]

 今回の「報告」を見ますと、ウラン兵器の危険性を指摘し、その禁止につながる積極的な「見解」が、いくつかの国々から出されています。

 劣化ウラン兵器の被害国であるセルビアは、「劣化ウラン兵器の使用は、国際人道法の基本原則に反している」「劣化ウラン兵器の製造と使用に歯止めをかけ、同兵器の廃棄に関する条約を採択するための、新たな取り組みに踏み出すべきである」と、明確に述べています。また、同じくバルカンの被害国、ボスニア・ヘルツェゴビナは、使用地域で土
壌、水、空気の汚染が認められたこと、汚染地域(ハジチ)からの移住者の癌死亡率が高いことなどを報告し、今後も住民の健康への影響を軽減するためのモニタリングが必要なことなどを主張。中東のカタールは、湾岸戦争時に使用された劣化ウラン兵器による汚染が戦場を越えて広範囲に広がった事実や、イラクでの癌の増加を指摘し、一般市民と環境に長期的影響が出ることを危惧し、劣化ウラン兵器の使用禁止への支持を表明しました。

 また、南米のアルゼンチンは、劣化ウラン兵器に関しては、すでに様々な機関による調査でも環境と健康へ深刻な被害を及ぼす可能性が報告されていることを踏まえ、その影響評価が定まるまで、まずは予防的に、このような兵器をこれ以上使用することを禁止(モラトリアム)すべきと、述べています。

また、昨年の国連決議の原案を作成し、決議採択に尽力したキューバは、UNEP(国連環境計画)などの国連機関の報告に基づいても、実際に、ウラン兵器の使用による汚染が確認されていること、一部の飲料水ではWHOの基準も越える値が認められていることなどを指摘し、劣化ウラン兵器による生物や環境への潜在的被害について議論を進めることの重要性を主張しています。

 NATO諸国やその他の欧州諸国は、残念ながら、ウラン兵器の禁止やモラトリアムを求めるようなスタンスを示していません。しかし、特徴的なのは、旧ユーゴやイラクなど、ウラン兵器が使用された地域へ派遣された自国兵士への健康影響の問題にスペースを費やし、各国が具体的にどのような調査や予防的対策を実施してきているかについて具体的に述べていることです。健康調査の結果については、基本的には「影響はない」との評価を出していますが、欧米各国が自国兵士への影響の可能性をきわめて憂慮しており、具体的措置を講じていることがはっきりと示されています。例えば、昨年の国連決議には反対票を投じたオランダも、「多国籍軍に関しては、同盟軍によって劣化ウランを含む兵器が使用されている、あるいは使用された地域でオランダの要員が従事する可能性はあり得ない」と、明記しています。

 このことは、同じようにイラクに自衛隊を派遣した日本にとって決定的意味をもつことであり、また、劣化ウラン兵器問題が、使用国と戦闘地域だけに関わる問題ではなく、戦後、PKOなどとして派遣される各国兵士にとっても――イラクには、三十数カ国が兵士を派遣しています――さらには、劣化ウランの実弾演習が行われている世界各地の射爆場周辺住民にとっても、現在進行中のグローバルな問題であることを際立たせる結果になっていると言えます。

 一方、ベルギーは、昨年同国が「ウラン兵器禁止法」(国内法としては世界初)を成立させるに至った経緯について、「科学的な確証が確立されるまでは慎重な態度を取るべきとする予防原則を適用し、最終的に政治的判断を行った」と述べています。

フィンランドは、「国連総会で示された、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用が人体や環境に及ぼす、潜在的に有害な影響についての懸念に対し、思いを同じくするものである。この問題は、いくつかの国際的調査研究の対象となっており、またさらに世界的な政治的議論を行うに値するものである」と前向きに議論する意向を示しています。

オランダも「人体や環境に及ぼす『潜在的』に有害な影響について」は、「これまでのところ、WHOなどの関連国際諸機関による科学的調査では実証できていない」としつつも、「さらなる調査が必要であることを認め、この問題が国連の公開討論の場で議論されることを評価している」としています。

 IAEAとWHOは、これまでの見解―一部で汚染が確認されており、汚染した残存物等の危険性を住民へ知らせることは必要だが、環境の汚染は全体として一般市民に健康影響が出る「レベル」ではないとするもの―と変わりません。そして、事実上、ウラン兵器が使用されることを前提とした「勧告」を行っています。WHOは、2001年の報告書以降の最新の科学的論文についての検討・評価を未だに行っていないにもかかわらず、「最近の疫学調査・実験による研究の新たな証拠を検討し、(前報告の)改訂をする予定でいるが、これまでの結論から大きな変更はないだろう」と、断言しています。このような予断に基づく結論は、全く科学的ではなく、きわめて「政治的」なものであり、強く批判しなければなりません。

「報告書」(英文)は、下記の国連の公式サイトにアップされており、またICBUWホームページからもアクセスできます。

N0843880.pdf (注:PDFファイルである)

http://tinyurl.com/3nyqm6

また、日本、フィンランド、ベルギー、オランダの「見解」の日本語訳は下記の「NO DUヒロシマプロジェクト」の下記のサイトにすでに掲載されています。あわせてご参照下さい。

http://www.nodu-hiroshima.org/content/view/174/1/#a1

ICBUW運営委員:嘉指信雄/森瀧春子/振津かつみ

ラベル:劣化ウラン
posted by はなゆー at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | キャスターメモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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