今はのどかな森の中の湖のほとり、ひとりの兵士が死んでいる。1時間前、兵士は生きていて戦っていた…。誕生までの彼の人生をさかのぼり、生きているというあたりまえのことを思い出す。97年刊を加筆復刻。英文併記。
価格:¥ 924 (税込)。
出版社:メディアファクトリー。
▼ アマゾンによる評 ▼
1997年にベネッセコーポレーションより刊行されたものに加筆して復刻された、大人に読んでもらいたい絵本。
今は、のどかな森のほとり、ひとりの兵士が死んでいる。1時間前、兵士は生きていて闘っていた。2時間前、兵士はひとり道に迷っていた。…10日前、恋人にプロポーズをし将来を誓い合った。バスケットボールが好きで高校時代は毎日していた。8歳の時、近所の犬の顔に落書きをしておこられた。
この絵本は戦争の絵本でありながら、戦争を描いたものではない。今は死んでいるひとりの兵士の人生を誕生までさかのぼっていくのであるが、その人生はあまりにも普通で、だからこそ胸に響く。ニュースでの戦死者は数で語られることが多く、その映像も現実味のないもの。しかし、そこで死んだ兵士のみならず一般の民衆にも、それぞれ普通で当たり前の幸せがあったのだということに気付かされる。シンプルな絵に簡潔な文章。淡々と描かれるそのページの余白に、何かを考えずにはいられない。
(小山由絵)
▼ 著者略歴 ▼
小泉 吉宏
1953年浜松市生まれ。武蔵野美術大学卒業。’93年に『ブッタとシッタカブッタ』を発表。’99年『ブッタとシッタカブッタ3・なあんでもないよ』で第45回文芸春秋漫画賞受賞。東京コピーライターズクラブ会員。
ラベル:戦争で死んだ兵士のこと