2008年04月10日

〔邦訳史料〕リチャード・ギアのニューヨークタイムズ紙への寄稿

http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/07/ny_0477.html

破滅へ続く鉄道(Railroad to Perdition)
by リチャード・ギア

ニューヨークタイムズ紙2006年7月15日付特別寄稿文

今月、北京からチベットのラサまでを結ぶ世界一高所を走る鉄道が全線開通したが、これは驚異的な技術的業績であり、中国発展の証左でもある。しかし、チベットの宗教の独自性と文化、言語的アイデンティティにとっては、中国による脅威の中でも最も深刻なものとなる。長い間中国の刑務所に収監され、その後亡くなったチベット高僧の言葉を借りれば、この線路はチベットにとって「非常事態と暗黒時代」の予兆だ。

世界の屋根を走る鉄道は、結果としてチベットに駐留する中国軍の拡大をもたらし、すでに悲惨な状況にある天然資源の乱用を加速させ、チベットに流入する中国人移民は増加し、今以上にチベット国民を周縁へと追いやることになるだろう。チベット首都のラサでは、すでにチベット人は少数派だ。

1950年の中国によるチベット侵攻以来、数千のチベット仏教僧院や宗教施設が破壊され、数万人のチベット人が亡くなった。現在、宗教弾圧はさらに巧妙になり、外部からは目立たなくされている。多くの寺院は一部再建されたが、多くは単なる観光施設となっている。チベットでは、完全な形で宗教を学ぶことはほとんど不可能だ。ダライ・ラマの写真を持っているだけで犯罪とみなされる。

多くのチベット人は線路建設のために土地を失い、遊牧民は都市に定住させられている。土地も宗教も奪われると、文化は消えてしまう。土地そのものが神聖なるものと見なされるチベットでは、これはまさに真実だ。

自らの文化が鉄道によって弱体化されているにも関わらず、ほとんどのチベット人は経済的恩恵を受けられない。40億ドル以上の費用をかけたチベット鉄道は、中国による西方地域開発政策の中でも最も高額で野心的な要素となっている。しかし、その建設は共産党の古い戦略と政治目的に立脚しており、鉄道建設で主要な恩恵を受けるのはチベットに駐留する中国人民軍や、中国企業と中国人定住者となっている。ほとんどのチベット人は、中国の政策によって整えられた経済環境で競争するための教育を受けることができず、成功の場に迎えられることもない。

チベットへの鉄道開通は、共産党のエリートたちにとってたいした重要性を持たない。鉄道建設計画は中国のチベット統合政策を完成させるために、40年以上前に毛沢東によって掲げられた目標の成果にすぎないのだ。悲しいことに、鉄道開通は政治弾圧の強化された環境で行われる。チベット自治区の共産党書記、張慶黎(Zhang Qingli)は、党はダライ・ラマとその支持者達との「死線に向けた闘い」に従事すると話している。

中国の胡錦濤国家主席は、7月1日に鉄道を正式開通させた。1980年代の終わりごろ、地区党書記だった胡錦濤は、ラサに戒厳令を発令し、数千人のチベット人に対する拷問と収監を指揮した。チベット人たちは胡錦濤の行った弾圧を忘れていない。胡錦濤はさらに、チベット人達に災難をもたらす急開発政策の草案に個人的に関わっている。同開発計画は中国都市部をモデルとして、チベット人の要求や考え、高原で何世紀も続けてきた生活習慣に配慮していない。ダライ・ラマは土地開発にチベット人も含めるように頻繁に主張している。

本当の「大躍進」は、経済開発にチベット人が活躍できる余地を残し、チベット人の宗教文化とアイデンティティを保護し、チベットの将来を決定する場にダライ・ラマを迎えることだろう。2002年以来、10年に及ぶ外交上の行き詰まりの後、北京とダライ・ラマの代表団との間で話し合いが何回か行われている。しかし現在のところ、この件における中国の取り組みは不透明なままだ。

知恵と思いやりを信条とし、相互依存と非暴力を掲げるチベットの貴重な文化と宗教は、チベットの地勢とチベット人民の心に深く根ざしている。チベット仏教の知識をその土地で存続させることは、チベット人にとっても世界にとっても重要だ。中国の躍進への道程が、この文化的遺産のさらなる破壊へ繋がるようなことは決してあってはならない。


(俳優のリチャード・ギア氏は、チベット国際支援運動(International Campaign for Tibet)の役員を務めている。)
(以上)


《備考〜ウィキペディア「青蔵鉄道」の項》

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E8%94%B5%E9%89%84%E9%81%93

なお、今後は青蔵鉄道の支線がシガツェ市まで建設される予定であり、その路線は最終的にネパールとの国境、更にカトマンズまで延伸される計画となっている。

posted by はなゆー at 21:41| ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 史料倉庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
映画「大いなる陰謀」を描いたレッドフォードは何と言うんだろうな?と思わずに居られない。
イラクも西蔵も米国の古いエネルギー政策の焼き直しだ。
彼等は自身で西蔵を収奪したいから中国が邪魔だし、上海協力機構と「新冷戦」がしたくて口実を探していた。
西蔵人の血はその生け贄だ。
Posted by 田仁 at 2008年04月11日 19:35
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック