日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」。
有馬哲夫・著。
価格:¥ 1,575 (税込)
単行本:336ページ
出版社:新潮社。
▼ 出版社/著者からの内容紹介 ▼
「日本テレビ放送網」----なぜ日本テレビの社名は「放送網」と
なっているのか?
「網」の字にはどんな意味があるのか?
その理由は設立時の秘密にある。
実は日本へのテレビの導入は米国による情報戦の一環だった。テレビ放送網は、そのまま「反共の防波堤」であり、さらに軍事通信網にもなるはずだったのである。
「テレビの父」である正力松太郎のテレビ構想は、アメリカ側にたくみに利用されたものに過ぎない。CIAは正力に「ポダム」という暗号名まで付けていたのである。
著者がアメリカ公文書館で発見した474ページに及ぶ「CIA正力ファイル」----。そこには、CIAが極秘に正力を支援する作戦の全貌が記録されていた!日米で蠢くCIA、政治家、ジャパン・ロビー、官僚、そして諜報関係者・・・・・・。
日本へのテレビ導入はアメリカの外交、軍事、政治、情報における世界戦略のパーツの一つだった。
▼ 内容 ▼
474ページに及ぶ「CIA正力ファイル」―。そこには、CIAが極秘に正力を支援する作戦の全貌が記録されていた!日本へのテレビ導入はアメリカの外交、軍事、政治、情報における世界戦略のパーツの一つだったのである。暗号名PODAM=正力松太郎。新資料で解き明かす「アメリカ対日心理戦」の深層。
▼ 著者について ▼
有馬哲夫(ありま・てつお)
1953(昭和28)年生まれ。77年早稲田大学第一文学部卒業。84年東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。93年ミズーリ州立大学客員教授。2005年メリーランド大学客員研究員。現在、早稲田大学社会科学部・社会科学研究科教授(メディア論)。
▼ 抜粋 ▼
序章 CIA正力ファイルの発見
二〇〇五年も押し詰まったころ、私の探求の旅はようやく終わりを迎えていた。ワシントンDCの郊外にある国立第二公文書館から衝撃的資料がでてきたのだ。「CIA文書正力松太郎ファイル」。この資料には、前に誰かが読んだことを示す折り目はついていなかった。
それまで四年にわたり私はアメリカ国内を文字通り東奔西走して資料をかき集め、生存する関係者に数度にわたってインタヴューしてきた。その目的は「正力松太郎による日本へのテレビ導入にアメリカはどのように関わっていたのか」という問いに対する答えを見出すことだ。
このために集めた資料は段ボール箱一六個分にのぼった。にもかかわらず、それらは「日本のテレビの父」正力とアメリカの政府機関との直接的関係を明らかにする上で決定力を欠いていた。だが、今度の資料は違っていた。
CIA文書は機密性の高さゆえに大部分が黒塗りの状態なっている場合がほとんどだ。だが、今回の「CIA正力ファイル」はところどころ固有名詞や日付が削られている以外はほぼ原形をとどめているうえに、分量もフォルダー三つ分、あわせて四七四ページもあった。数年にわたる資料収集によって外堀を埋めていた私には十分過ぎる量だった。
中身にいたっては、CIAが極秘に正力を支援することを作戦とし、その実施のための必要書類の作成を命じたり、作戦に実施許可を与えたりというものだった。これ以上の直接証拠があろうか。
しかも、この作戦のなかで正力はCIAから「ポダム」という暗号名まで与えられていた。この暗号名はこれ以降もCIA文書に登場し続けることになる。
正力ファイルが四〇〇ページ以上にものぼるのはこのためだ。
この文書は、これまで憶測でしかなかったことを歴史的事実として浮かび上らせた。その結果、ぼんやりとかすんでいたものがはっきりと輪郭をあらわし始めた。それは、一言でいえば、正力による日本へのテレビ導入はアメリカが政策として「仕組んだ」ものだった、ということだ。私の行く手にようやくゴールが見えてきた。
しかし、断っておきたいのは、だからといって、これは特定の関係者や企業を責めれば済むという問題ではないということだ。これから明らかにしていくように、この問題はあまりにも日米の現代史の深いところに根ざしている。見かけよりも広い文脈を持ち、多くの人々が関わっている。
それに、私自身、これに関わった人々と企業と機関を非難すべきかどうか、今もわからない。現在の日本の繁栄と分かちがたく結びついているからだ。それに企業、機関についていえばそこに働く人々や体制も多くの場合、変ってしまっている。
確かなのは、責めるかどうかは別にして、現在を生きる者はこの事実と向かい合わなければならないということだ。それはもう終ったことではなく、現在とつながっているからだ。今も現実を動かしている重要な要素の一つだとさえいえる。
ちなみに、ワシントンの博物館群のなかでもその壮麗さがひときわ目を引く国立公文書館にはこのような銘が刻まれている。
「過去から引き継がれたものは未来を生み出す種となる」
過去から学ぼうとしない者に未来はない。過去の過ちの永遠の繰り返しがあるだけだ。過去から学んだものだけが、この繰り返しから脱して未来の扉を押し開けることができる。
このあと私がどのような旅をし、どのようにゴールに達したのかを明らかにしていくが、それは過去のことを暴き、非難するためではない。
現在を見つめ直し、過去の繰り返しではない未来を招来させるためだ。
▼ 目次 ▼
CIA正力ファイルの発見
日本テレビ出生の秘密
反共スキームに飲み込まれた正力構想
日本テレビとジャパン・ロビー
心理戦のプロ集団ドゥマン・グループ
正力ロビーを操ったジャパン・ロビー
CIAを引きずりこんだドゥマンの士気工作
密約の崩壊
かくしてCIAと日本テレビはリンクした
一〇〇〇万ドル借款バトル始まる
日本テレビ開局と怪文書
吉田、正力つぶしに動く
電電公社の逆襲
心理的再占領体制下の日本